ニトリのノウハウによって
現地工場にも貢献

インドは伝統的に手織り製品に強い。一方で、価格は安いが科学的な品質管理が甘い工場もまだまだ多い。I氏は、品質、価格共にニトリが納得できる工場を探すために飛びまわった。インドはもちろん、欧米で開催されるテキスタイルの展示会に足を運んではインド企業を見つけ、製造を委託できないか、直談判を重ねたのである。

「技術や価格がクリアーできても、工場監査の結果、こちらから断るケースもありました。コンプライアンス上、ニトリとして取引できない工場もあったからです」

例えば、染色工程で汚れた水をそのまま流すような工場や、児童労働者を使っている工場などだ。いくら技術が高かろうと、あるいは金額が安かろうと、I氏は頑として取引に応じることはなかった。その理由を伝えることで、工場側は問題点に気づき、自ら克服しようとする。結果的にインドの労働環境の改善に貢献できるという側面もあった。

「取引することになった工場に対しても、ニトリの品質管理ノウハウを導入したことで、大変に喜ばれました。このように取引先を育てていくことも、新興国で働く歓びのひとつです。ニトリと取引していることはインドの工場にとってもステータスになるようで、“他の日系企業が、ニトリが取引しているなら安心だと、新しい取引を持ちかけてきた”などという話も聞きました。誇らしかったですね」

異文化ビジネスならではの
壁に直面する

こうして工場として何社かの開拓に成功。そのうちの1社とは、具体的にベッドシーツの新製品づくりを進めることができた。

「インドは、デリー周辺や東側のエリアが伝統工芸に強く、西側のムンバイを中心としたエリアが工業製品に強いんです。取引が決まったのは、この西側の工場。オートメーション設備も調っており、大きな期待を寄せています」。

もっとも出荷にこぎつけるまでは、1年近くの時間を要したという。2017年の年初、我々の希望する商品スペックをつくることのできる工場探しを開始し、実際に生産をオーダーしたのは9月になってから。12月末にようやく最初の出荷にこぎつけることができた。

「やはり文化の違いというか、インド特有の時間的なルーズさに悩まされました。約束の日に出来上がっていないのは、よくある話。商談の担当者が代わると合意していた金額も『聞いてない』の一言で変わってしまった。こうした壁を乗り越えていくのも、海外のビジネスならではの醍醐味でしょうね」

バーチカルマーチャンダイジング
推進のカギを握る

なぜインドでの出荷量を増やすことが、ミッションとしてI氏に課せられたのか。それは脱・中国のトレンドの中、ニトリがベンチマークとしている欧米のチェーンストアが“Made in India”に力を入れているからだ。I氏は、マネジャーに就任直後、コットンの産地としてのインドの可能性に着目。自ら調査を行った。

「ニトリでは中期経営計画で、バーチカルマーチャンダイジングに力を入れると打ち出しています。そのためにコットンの原料から管理しようと考えており、コットンの世界的産地であるインドは我々にとって非常に魅力的な国なんです」

インドのコットン製品の輸出高は世界2位で、GDPの5%を占める一大産業だ。しかし、業界は旧態依然としており、中間業者が何重にも搾取するなど前近代的な体質となっている。SPAとしてのニトリのノウハウによってここを改善することで、バーチカルマーチャンダイジングを推進する上で貴重なリソースを手に入れられるはずだ。

「今後、ニトリが世界展開を推し進めていく上で、コットン産地としてのインドが大きな貢献をすることは間違いないでしょう。そのときを見据えて、業界改善に向けた準備を始めたところです」

世界を舞台に、
同じ志の仲間と本気で競争する

ニトリのグローバル展開において、競争上のリーダーは中国であり、インドはチャレンジャーという立場だ。

「しかし、人口が13億人を超えるインドには、中国に勝てるポテンシャルがあります。私はインドを率いるものとして、なんとかして中国の牙城を崩したいんです」

つまり、同じニトリのグループの中で、地球を舞台にコンペティターとして競い合いたいというわけだ。実際、タオルはインド、中国を含めて4カ国で生産し、出荷量を競い合っている。こうしたダイナミックな競争環境が、グローバル展開を推し進めるニトリの原動力なのだ。

「タイにも、バングラデシュにも同じ仲間がいます。もちろん個人的には仲が良いですが、ビジネスではライバル。負けたくないですね」

I氏自身、常に新しいことに挑戦するのが好きなので、インドの次はトルコやエジプトといった新しいマーケットにチャレンジしたいという野望もあるし、日本に帰って経営陣の一角を目指したいという志もある。

「チェンジ、チャレンジ、コンペティションがニトリの3C主義。これからも新しい挑戦を続けていきたいと思います」

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